一昔前は「スタートアップはリスク高くて不安定」という印象が一般的でしたが、今は「スタートアップはやりがいあって楽しそう」と感じる人が増えてきました。
そのため、大企業や有名企業からどんどん優秀な人材がスタートアップに転職する流れが加速しています。
だれでも、人生の転機となる転職には不安がつきものです。
はじめての転職とあれば、その不安はなおさらのはず。
不安だらけの転職活動は、できるだけ有利にすすめたいですよね。
スタートアップは、少人数で事業を急成長させていく使命を負っている組織です。
そんなスタートアップの採用に有利に働く条件と採用裏事情について、年間100人以上の面接を行っていた経験をもとにまとめてみたいと思います。
スタートアップへの転職で有利になる条件
1.募集ポジションの業務経験がある
まあ、これは当たり前というか、納得の条件ですよね。
これまでの職務経歴で、募集しているポジションの業務経験がある方は、スキル面で活躍イメージがわきやすいため、採用に有利に働きます。
スタートアップ界隈では、経験者がなかなかいないため、限られた「2周目人材」が各社で取り合いになっています。
ここで注意が必要なのは、一口に業務経験が一致しているといっても、経験の詳細が重要だという点です。
たとえば、こんな応募資格の「法人営業」求人があったとします。
【必須(MUST)】
・法人営業の経験3年以上
・BtoBサービスの新規営業・顧客対応経験
一口に「法人営業経験」といっても、
- 無形商材か有形商材か
- 扱っていた商材の単価は高額か安価か
- クライアントのターゲット規模はどれくらいか
経験した内容によって、業務難易度が異なります。
一般的に、「無形商材・高額・企業規模規模大(エンタープライズ)」の方が難易度が高く、その経験価値は高くなります。
月額数百万もする無形商材の営業経験では、個社別の提案書作成、長期間の提案、競合とのコンペなど求められるスキルも高くなるからです。
もちろん、経験者の方が有利ですが、転用可能なスキルも多いので、そのあたりの業務詳細については面接でお互いにしっかりすり合わせを行いましょう。
スタートアップの募集は、そのポジションで成果をあげてくれる「ピンポイントの特殊技能をもっているか」が重視されます。
さらにフェーズが早い初期スタートアップの場合は、少人数で様々な業務をこなさなければいけないため、あれもこれも対応できる守備範囲の広い器用な人が重宝されたりします。
2.転職の軸(会社選びの基準)がはっきりしている
スタートアップに限ったことではないと思いますが、年収が高く、勤務時間は短く、裁量権も大きいポジションなんてものは世の中に存在しません。
私は面接の際、必ず「今回の転職で譲れない会社選びの基準となる転職の軸」を伺うようにしています。
その基準を伺うことで、入社後に双方の期待値のズレが小さくなり、ミスマッチが減るからです。
例えば、前職でインサイドセールスの実務を経験した人が、今回の転職で「インサイドセールスチームの立ち上げを経験したい」と希望していたとします。
このように基準がはっきりしていれば、自社でその環境を提供できるフェーズなのか、そうでないかがはっきりするため面接する側も現状を伝えやすいです。
一方、転職の軸に「年収」を言われるケースが多くあります。
一般的なスタートアップの年収相場は、大企業と比較すると感覚として2〜3割低い印象です。
会計士資格を持っていてCFO候補として転職希望するといった特殊事例をのぞけば、業界・職種未経験で年収維持またはアップする転職が成功するケースは非常に少ないと思いますので、年収を譲れない軸にスタートアップへの転職活動をする方は注意が必要です。
3.現年収が低い
前項でもご説明したとおり、一般的なスタートアップの年収相場は低いです。
30歳で年収500万円の業界未経験候補者の場合、100万円くらい減額された提示になることもしばしばです。
もちろん、エンジニアやデザイナーなど人気職種だと年収が増えるケースもありますし、役職によってはストックオプションが提示されることもあります。
そういう中で、業界的に年収面で不利な環境に所属されている方は、年収現状維持かそれに近い形でのオファーも充分にありえます。
実力はあって結果も残しているのに、業界構造上年収面で不利な条件で働いている方は、転職チャンスが大きいといえます。
一方で条件的に厳しいのは、現在高額な年収をもらっている業界で働かれている場合です。
金融、商社など年収の高い業界に所属している方は、年収が大きくあがる前に転職しないと、一時的に減収が大きくなります。
生活面で、どうしても年収が下げられない場合等。それぞれの事情もあると思います。
そうした場合、ベースの年収をスタートアップ基準にあわせ、一時金で調整してもらうなどの提案をしてみることをおすすめします。
一年かけて成果をあげ、最終的に現年収に戻してもらうのです。
スタートアップ側も、成果をあげた人材には評価で報いてくれると思うので、年収交渉で難航した場合はぜひこの方法で交渉してみてください。
4.すぐに入社できる
意外にありがたいのが、面接後早い段階で入社できることです。
スタートアップは、とにもかくにも「スピード命」です。
一日でも早く入社してくれる可能性がある方は、歓迎すべき要件です。
退職意向をまだ会社に伝えておらず、さらに引き継ぎに時間を要する方の場合、面接から入社まで数ヶ月待つことになります。
現職で迷惑をかけたくないという誠意はとても好感が持てますが、採用する側としては一日でも早く一緒に働きたいと思っているのも偽らざる本音です。
経験、年収など、ほとんど条件が同じ応募が複数あった場合、入社時期が決め手になることも充分ありえます。
もちろんどれだけ待てるかという状況は、各社によって、ポジションによって、候補者によって異なることは言うまでもありません。
ただ、大企業出身者で「年度が変わる4月入社希望」などと悠長にかまえていると、他の人にそのポストを奪われてしまうかもしれないのです。
また、離職後1年以上転職活動を続けているなど期間があきすぎていると、「どの会社でも採用されず、転職活動苦しんでいるのかな?」という疑念が生まれます。
その場合は、期間があいている理由をしっかり話せるように準備しておきましょう。
スタートアップで転職が決まりやすいタイミング
では、スタートアップで転職しやすいタイミングとはいつなのでしょうか。
①調達直後
スタートアップのニュースリリースで「シリーズBで10億円調達」のような記事をみたことがあるのではないでしょうか。
資金調達後は、事業成長を加速させるスイッチが入り、採用にかける予算を増やすことが多く、採用人数が増加する傾向にあります。
最近だと、「調達した資金のうち◯億円を人材に投下します」と明言するスタートアップもあるほどです。
大型の資金調達を行ったスタートアップの情報をまとめ、そういった会社を狙って応募していけば、採用確率は高まると思います。
②求人募集をかけた直後
求人が掲載された直後は、人事もそのポストの採用熱が一番高まっているときです。
また、掲載直後には競合となる候補者がいないので採用確率は高まります。
たまに、ポジションが埋まったにもかかわらず、掲載を消し忘れているケースもあります。
スタートアップの求人は枠が少ないので、自分が興味のある起業で希望するポストの求人が掲載された場合、急いで応募するようにしましょう。
③責任者クラスが交代したとき
CXOまたは事業責任者クラスが新しく着任したときは、採用を強化することが多いです。
スタートアップでは、事業フェーズにあわせてCXOクラスが交代することがあり、新しく着任した責任者は強化したい方向に強い人材を補強します。
例えば、これまではWebマーケしか行っていなかった会社で、マーケティング責任者が着任と同時にオフラインマーケを強化する戦略を打ち出したとします。
そのときに、セミナーやイベント開催経験のあるオフラインマーケティングに強い人材を募集するといったケースです。
幹部クラスのジョインについても、採用広報の一環でリリースしている会社も多いですので、そういった情報も定期的にウォッチしてみるとよいでしょう。
さいごに
スタートアップへの転職で有利になる条件というテーマで書いてきましたが、スタートアップへの転職でもっとも重要なポイントは「企業との相性」です。
スタートアップは、会社ごとに組織風土が驚くほど違います。
生産性を重要視する会社もあれば、チームワークを大事にする会社もあり、その雰囲気は多種多様です。
社員同士仲のよいウェットな関係の会社もあれば、仕事の関係と割り切ったドライな会社もあります。
ご自身がどんな価値観が好きで、自然体でいられるかという観点でも、社風をじっくりと見極めて会社選びをしてください。
最後に、スタートアップに向いているひとの特徴をこちらにまとめているので、興味のある方はこちらもご覧いただければと思います。
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