最近、大企業に勤めている友人から相談をもらうことが多くなってきました。
合コンでモテることまがいなしの誰もがあこがれる大企業勤務、ワークライフバランスも充実していて、収入もかなりもらっている。
そんな大企業エリートが、「このままではいけない」とキャリアに対して漠然とした不安を抱え、理由も分からず悶々と毎日を惰性で過ごしている。
意外に感じる方も多いかもしれませんが、そんな人が増えています。
私も、30代中盤まで大企業で同様の不安を感じ、今はスタートアップに転職した経験を持っています。
そういった経験を踏まえ、大企業で今もそんな不安を感じている方に知ってほしい「プロティアンキャリア」という概念を解説します。
プロティアンキャリアとは?
「プロティアンキャリア」は、アメリカの心理学者ダグラス・ホールによって提唱されたキャリア理論です。
「プロティアン(Protean)」はギリシア神話のプロテウスから名付けられていて、思いのままに姿を変えられる「変幻自在である」ことを意味しています。
プロティアンキャリアは、従来の伝統的なキャリアと対比する形で捉えることができ、環境変化に自分自身も変化させていく柔軟なキャリア形成の考え方です。
従来の伝統的なキャリアでは、一度就職すると終身雇用が前提となっていて、組織内でのステップアップに重きを置いたキャリアが中心でした。
その核となる価値観は、「(その組織における)昇進や権力」で、その報酬として地位や給与が目的となっていました。
しかし、プロティアンキャリアでは、「自由や自己成長」が価値観の中心となり、「自分は何がしたいのか」という自己への気づきが重要なアイデンティティとされています。
プロティアンキャリア | 伝統的キャリア | |
主体者 | 個人 | 組織 |
核となる価値観 | 自由、成長 | 昇進、権力 |
移動の程度 | 高い | 低い |
重要な目的 | 心理的成功 | 地位、給与 |
重要な態度側面 | 仕事満足感、自尊心 | 組織コミットメント、他者評価 |
重要なアイデンティティ | 自分は何がしたいのか | 私は何をすべきか |
重要なアダプタビリティ | 自分の市場価値はどれくらいか | 組織で生き残ることはできるか |
[出典] Hall2002、渡辺三枝子著「新版キャリア心理学」第2版 P173
大企業で働くひとのキャリア不安の正体とは?
大企業で働くひとの多くが感じる「不安やモヤモヤ」の正体は、プロティアンキャリアに移行した現在において、重要なアダプタビリティが「自分の市場価値はどれくらいか」に変化しているからです。
つまり、今やっている仕事や経験が、自分の市場価値につながっていない気がすることで、不安に感じてしまうのです。
大企業に勤める多くの先輩社員は、これまでの伝統的なキャリアの「組織で生き残ることはできるか」という価値観に従って生きています。
しかし、メディアや周囲から聞こえてくる情報は「自分の市場価値はどれくらいか」という価値基準に変化していて、そのギャップにモヤモヤしてしまうのです。
SNSが発達したことで、大学時代の友人や著名人の意見がすぐに手に入るようになったことで、このモヤモヤを感じる機会が増えているのも一因です。
大企業では、終身雇用を前提とした旧来のキャリア形成プログラムを依然として踏襲している企業が多いです。
そうすると、若手社員は議事録作成やコピー取りなど、一見雑用のような仕事を担当することが多く、自分自身が成長している実感を感じにくいかもしれません。
また、大企業ではエリート社員がジョブローテーションで多くの部署を経験させる会社が多いように思います。
営業で成果をあげた人が、次に人事に異動になり、そのあとに調達の部署を経験するといったキャリアの人も多いのではないでしょうか。
これは、従来の伝統的なキャリアでは、複数部署を経験させることでジェネラリストとしてキャリアを積み上げることこそが、組織で昇進し、地位や給与を高めていくという考え方に基づいています。
しかし、2〜3年毎にジョブローテーションをしていたのでは、職務の専門性を身につけることはできません。
そのため、プロティアンキャリアが重視される現代において、市場価値の観点で評価が低くなってしまうのです。
キャリアの不安を解消するためにやるべきこと
では、大企業でキャリアに不安やモヤモヤを感じている人はどうしたらいいのでしょうか。
ここで、すぐに取り組むことができる、今やるべき3つのアクションプランをご紹介します。
①自分がやりたいことを言語化する
キャリアの不安を解消するために、まず「自分は何がしたいのか」を明確に言語化しましょう。
従来の伝統的なキャリアでは「私は何をすべきか」という価値観で、組織コミットメントが求められています。
そのため、大企業でキャリアに不安を感じている多くの人は、「特にやりたいことがない」人が多いです。
やりたいことがすぐに言語化できない人は、就活で行ったような「自己分析」を改めて行ってみましょう。
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②これまでの経験を棚卸しする
次に、自分がこれまでやってきた経験を整理しましょう。
その際におすすめなのが、「職務経歴書」や「ジョブカード」を作成することです。
職務経歴書は、一般的に転職活動をする際に使用するものですが、この書類を作成することで、これまでのキャリアや経験、自身のスキルを棚卸しすることができます。
職務経歴書は、できれば半年に1回、最低でも1年に1回以上のペースで職務経歴書のメンテナンスをすることがおすすめです。
職務経歴書を手元に持っておけば、いざ転職をしたくなったときに作成する手間も省けるため一石二鳥です。
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また、同様の位置づけとして厚生労働省がキャリアの棚卸し用に「ジョブカード」の作成を推奨しています。
こちらのフォーマットで、キャリアの棚卸しを行ってみるのもいいかもしれません。
③実際に自分の市場価値を確認する
3つ目のアクションプランは、実際に自分の市場価値を確認するというものです。
どうやって市場価値を確認するかというと、「転職活動」で市場価値を確認できます。
という方も、ちょっとお待ち下さい。
「転職」と「転職活動」は別物です。
転職活動をしたからといって、必ず転職をしなければいけないというわけではないのです。
転職活動をサポートしてくれる転職エージェントに登録することで、自分にはどんな求人があるのか?、いくらくらいの年収でオファーがくるのか?をリアルに知ることができます。
私もたくさんの転職エージェントに登録してきましたが、はじめて転職活動をされる方はJACリクルートメントがおすすめです。
登録も面談も無料なので、一度気軽に登録してみてください。
転職活動ってどうやってはじめたらいいの?をもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせて読んでみてください。
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まとめ
大企業でも終身雇用が見直されはじめるなど、少しずつ従来の伝統的なキャリアにも変化が見え始めています。
しかし現代は、あらゆる環境が目まぐるしく変化し、将来の予測が困難になっているため「VUCAの時代」と言われたりする時代です。
私達は、それらの変化に柔軟に対応していかなければ、生き残っていくことはできません。
大企業で働く人のもやもやは、「人生100年時代に自分は生き残ることができるのか?」という漠然とした不安です。
「組織で生き残ることができるか?」という従来の伝統的なキャリア価値観にとらわれることなく、自分自身でキャリアをつくりあげるという意識を持ち「プロティアンキャリア」に対応していきましょう。
不安やモヤモヤは、行動することでしか解消できません。
せっかく、ここまでこの記事を読んでくれたのであれば、今すぐ転職活動をはじめましょう。
転職活動はノーリスクです。
なにから手を付けていいかわからない人は、まず転職エージェントに登録してから、いろいろな課題を整理していきましょう。
みなさんの不安やモヤモヤが少しでも解消されるのを願っています。