今でもそんな風に思っている方は、意外と多いのではないのでしょうか。
しかし、これだけ変化の激しい時代に、大企業に漫然と働き続けることはリスクでしかありません。
厳しい就職活動を勝ち抜いて大企業に入った方には、旧世代のキャリアではなく、新時代を生き抜く新しいキャリアのロールモデルを自らの手で模索してほしいと思っています。
私は、36歳で大企業を辞めてスタートアップに転職しました。
自らをキャリアを振り返って今思うのは、20代の選択肢が豊富なうちに、自分の人生についてしっかり考えた上でキャリアについて自らの意思で決断してほしいということです。
では、大企業で働き続けることが、なぜリスクになるのかについて、解説していきます。
大企業=安定という時代は変わった
昔は「いい大学を出て、大企業に入れば将来安泰」と言われてきました。
しかし、経団連の中西宏明会長やトヨタ自動車の豊田章男社長が「終身雇用の見直し」に言及するなど、これまでの当たり前が変わりつつあります。
社会がこれだけ大きく変化しているにもかかわらず、大企業の前提となっている制度や仕組みの多くは、昭和の高度成長期につくられたものです。
つまり、日本経済が上り坂の状態で作られた制度をもとに、改良を繰り返し運営されているのが大企業なのです。
大企業で働き続けるリスクとは?
最近では平均寿命も伸びていて、「人生100年時代」とも言われています。
私達は、人生100年時代の新しいキャリアを、自らの手で模索しなければなりません。
人生100年時代が当たり前になると仮定したとき、大企業に居続けることがなぜリスクなのでしょうか。
リスク① 60歳〜80歳に働くことを考慮していない
現在の大企業の制度は、65歳から年金をもらうことを前提にした制度設計になっています。
多くの会社では60歳前後で役職定年を迎え、希望者には給与を大幅にカットして65歳まで雇用延長するのが一般的です。
つまり、年収および活躍のピークが50代になるように設計されているのです。
これは、終身雇用、年功序列という日本的経営をベースにした高度成長期の名残です。
子どもが大学生を迎え、家計支出が一番ピークになる50代に賃金がピークを迎えるように制度設計されているのです。
そのため、60歳以降のキャリアについて、現行大企業の制度ではあまり考慮されていません。
裏を返すと、60歳になった段階で野に放たれる可能性が高いのです。
もちろん、現代の60歳は昔に比べてとても若々しく、バイタリティにあふれています。
しかし、60歳になってからセカンドキャリアを考えるのは遅すぎるのではないかと私は思います。
リスク② 30〜50歳で転職しにくい
30〜50歳で転職しにくい最大の理由は「年収」です。
その年代になってくると、結婚して子どもが生まれていたりします。
その場合、年収を下げて転職をすることになかなか踏み切れないケースが増えてくるのです。
というのも、大企業では30〜50歳の報酬レンジが転職市場と比較して有利な条件になっていることが多いからです。
つまり、自分が転職市場で450万円の評価だったとしても、大企業に所属していることで年収600万円もらえているという状態です。
加えて、30代、40代と歳を重ねるごとに、実際にもらっている年収と転職した際の差額が大きくなっていきます。
そうすると、年収ダウンを受け入れられず、どんどん市場価値と報酬のギャップが広がっていき、転職のチャンスを失っていくのです。
もちろん、スキルや経験、実績によっては年収を下げることなく転職できる人がいるかもしれませんが、それはかなりレアケースです。
そういう意味でもリスクの低い20代のうちに、大企業で働き続けるか、外にでるかについて真剣に考えてみることをおすすめします。
また、すでに30代をすぎてしまった方も、一時的な年収の増減で転職を判断するのではなく、生涯年収という観点で転職の是非を判断すべきです。
その会社に居続けることで得られる期待報酬と、転職した場合に得られる期待報酬の総額を比較し、生涯年収ベースで意思決定することが大事です。
リスク①でも触れたように、大企業の60歳以降の年収は大幅に激減します。
60歳から10〜20年働くと想定した場合、転職時の一時的な年収減は生涯年収ベース(LTV)でみたときに逆転するケースは多いと思います。
リスク③ 専門性が身につきにくい
大企業では、ジョブローテーションがあることが一般的です。
営業→法務→広報→営業企画
といったように、2〜5年おきに部署を異動していく設計になっています。
たくさんの部署を経験することで、幅広く活躍できるジェネラリストを育成する仕組みです。
このような制度のもとでは、専門性が身につきにくいです。
転職市場では、職種ごとのジョブ型採用を行う関係で、専門性の見えにくいキャリアの人は評価が下がる傾向があります。
専門性が身につきにくいことも、転職市場と年収のギャップを広げる一員になっていると思います。
また、仮に専門性を身につけたいと営業に居続けることを希望していたとしても、どの部署に配属するか最終決定権は会社にあります。
大企業では、希望を伝えることはできても、それが必ずしも通るわけではありません。
最近では若手の離職リスクを鑑みて、希望を聞き入れてくれることも多くなっていますが、管理職などマネジメント層に入ってしまうと、希望通りの部署に居続けることは現実的には難しいでしょう。
リスク④ 健康を失うリスク
ここでリスクと言っているのは、職場の人間関係で生じる「メンタルヘルス」のリスクです。
大企業に居続けるという選択をした人は、仮に上司とうまくいかなかった場合、「耐える」以外の選択肢を持てなくなります。
私も大企業勤務時代「いい上司も最悪の上司も2年経てば変わるからじっと耐えるんだ」とよく先輩に言われました。
パワハラなどでつらい環境にいた場合でも、自分が異動になるか、上司が異動になるまで耐え続けなければならないのです。
厚生労働省の「平成30年 労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、1,000人以上の従業員を抱える事業所で、メンタルヘルス不調で連続1か月以上休業した社員がいる割合は91.9%、退職した社員がいる割合は70.3%となっています。
つまり、メンタルヘルス不調で休職、退職することも、可能性としては充分にありえるのです。
実際私の所属していた部署でも、メンタルヘルスで休職、退職する社員が発生していました。
もし、いつ転職しても大丈夫という選択肢をもっておけば、仮にパワハラや人間関係のトラブルがあった際に、心置きなく辞める選択肢をチョイスできます。
大企業に居続けることを前提にしていると、「耐える」以外の選択肢が浮かばなくなり、健康を失うリスクが高まります。
さいごに
就活中の学生と話をすると、「安定した会社に行きたい」と言われることがあります。
はっきり言います。
世の中に「安定した会社」など存在しません。
外部環境は常に変化し続けています。
変化の時代における、最大の安定とは「常に選択肢を持ち続けられる状態で居続けること」です。
そのためには、常に自分自身が成長し続けなければいけません。
もちろん、大企業の中でも日々成長を続け、イキイキと新しい取り組みにチャレンジしている素敵な人もたくさんいます。
大企業の仕組みを知った上で、大企業に居続けるという選択もありだと思いますし、大企業で出世競争に勝ち抜き社長になることもひとつの選択肢です。
「大企業に入ってしまえば、あとは全員安泰な未来が待っている」という時代はもう終わりました。
今いる50代は、現状の仕組みで逃げ切れるかもしれません。
40代は逃げ切れないとわかっているけど、もうすでに大企業に居続ける以外の選択肢を持ち合わせていないかもしれません。
20代の方には、まだ選択するチャンスがあります。
このまま大企業に居続けるか、それとも他の選択肢を模索するか、この機会に今一度考えてみてください。